†Orion†


躊躇する俺を、杉浦さんはじっと見据える。


そんなに見ないでください。

ドキドキしすぎて、血管が破れてしまいそうだ。


まるで俺が、名前で呼ぶのを待っているかのような視線。

困惑している俺を、その視線は捉えて逃がさない。



「……“優菜さん”」



これ以上見つめられたら、息が止まりそうだ。


好きな人に見つめられるのはこのうえなく幸せなことなのに。

緊張が極度に達してしまった俺は、爆発してしまいそうな自分のからだを思い、彼女の下の名前を早口で言った。



「……“雅人くん”」


「え……っ?」



< 64 / 359 >

この作品をシェア

pagetop