†Orion†


「……でも、どうして急にそんなこと……」


「うん……。雅人くんたち見ていたら、若いっていいなぁーなんて思っちゃって」



年寄りみたいなことを言う優菜さんに、俺は思わず吹き出してしまった。

「年寄りみたいだ」と、笑い続ける俺に釣られて、優菜さんもクスクスと笑い始める。



――しばらく笑ったあと、俺は深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。



いま、たまらないくらいに、優菜さんを好きだと思った。

二人きりの時間が、このままずっと続けばいいのに、と。



改めてそう思い、いつも以上に優菜さんを求めてしまうのは、きっとビールでほろ酔い加減になっているせいだ。



“理性を失っちゃダメよ”



失ったら、ダメになる。

思いを伝えたら、崩れてしまう。



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