†Orion†
分かってる。
じゅうぶんに分かってる。
だけど――……
「……雅人くん?」
俺の身体は、少しずつ、引き寄せられていくんだ。
蜜に群がるミツバチのように。
今ならきっと、“酔った勢い”で、水に流せるかもしれない。
“酔っていました、ごめんなさい”で、許してもらえるかもしれない。
そっと手を伸ばした先に触れたのは、彼女のひんやりとした頬。
いっそのこと、拒絶してくれたらいいのに。
それなのに彼女は、俺の手を払いのけず、こちらをじっと見据えているだけだ。