†Orion†


ゆっくりと顔を近づけても、俺の右手は優菜さんの頬に触れたままだった。



……ほんとうに、いいのか?



目で問いかけるけれど、薄暗くて優菜さんの反応は読み取れない。

ゆっくりと目を閉じ、そのまま顔を近づけると、唇に少し硬い感触がした。



目を開くと、俺の唇には、優菜さんの人差し指が押し当てられていた。



「ダメだよ」



落ち着いた声で、優菜さんは言う。



“ダメ”と言われると、余計にしたくなるのが人間の性なんだ。


俺は優菜さんの人差し指を手のひらで包み込み、遠ざける。

そして、再び顔を近づけ、その柔らかい唇にキスを落とした。



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