†Orion†
――初めてのキスは、夏の匂いがした。
遠くから聞こえる、キャンプ客の喧騒。
優しく吹く、夜風。
「――ごめん……」
唇が離れたあと、俺の口からこぼれたのは悔いの言葉。
酒は、魔物だ。
酔うと人恋しくなり、自分の好きな人が目の前にいると尚更だ。
触れたい、一歩前に進みたいという欲求を抑えきれなくなる。
あれだけ、大丈夫だと何度も言い聞かせていたくせに。
「……まったく」
優菜さんが少し呆れたように笑いながら呟く。