my First boy last boy.
見えない物
夢だけでいい、
そんなの…嘘だ。
夢が醒めた後、泣いてたじゃないか。
「ねぇ凪沙、もう遅いかもしれないけど、お花見行こうか?」
え、とあたしは、視線を窓の外から海斗へと戻す。
「どうして…?」
「理由なんてないよ。春だから」
にこっ、て笑う海斗をあたしはまだぼーっと見ていた。
「この桜は、一年にこの時期しか見れない。だから、充分見ておかないとね」
取っ手を掴んだコーヒーカップを持ち上げて、ゆっくり口に付ける。
急にどうして、そんなことを言い出したのか。
あたしはなんとなく分かっていた。
あたしは、自分でも無意識の内にふとした時、窓の外の桜を見つめてしまっていたから。