my First boy last boy.
「…あいつ、戻ってきてたんだな……筒井 春…」
「…もう筒井じゃないよ。今は速水」
「会ったのか!?」
普段落ち着いている秋ちゃんが、テーブルに前のめりになって、驚いた様子だった。
「…うん、海斗とお花見に行った時に」
「…そうか…」
まさか秋ちゃんが、春の顔を覚えてたなんて思わなかった。
春が家に来たときに2、3回会っただけなのに。
最近、皆が皆…春という名前を口にする。
今までずっと、全く口にされなかったのに…。
思い出の中の、人だったのに…。
それを埋めるかのように、何度も繰り返される。
だけど…待って。
秋ちゃんが、知ったってことは…?
心臓が嫌な音をたてる。
「ねぇ、秋ちゃん…。このこと、海斗には言った…?」
「…言ってないよ」
その言葉に、肩の力が抜ける。
海斗は…まだあたしと春のことを、なにも知らない…。