my First boy last boy.
「ううん、なんでもない。
…………あ!春、こないだはありがとうね?」
「こないだ?」
何時のことだ、と不思議そうな顔をする春。
「海斗に、教えてくれて」
それで、
ああ、とピンッときたらしい。
「あれは、社長ももうすぐ上がりの時間だったし。けどほんと、人間技とは思えない早さで帰って行ったよ」
クスクス。容易く想像出来る。
「…っと、馬鹿なんだから」
そう言ったって、あたしの口元はゆるゆると緩んでる。
「社長は、ほんと素直だからな」
その声色に、どうしてか顔をあげてしまった。
そして、後悔する。
灰色で何も映すことのない、瞳が、揺れていたから。