おかえりなさい(更新停止)
家の前まで来る日はそう遠くなかった。
ある日の学校帰り、登校時にはなかった筈の石畳がすでに溝に敷かれていた。
僕はランドセルを放り投げるように地面に置いて石畳に手を掛けた。
僕一人の力では到底持ち上げることはできそうになかった。
石畳の隙間にある穴に手を入れて、全身の体重を後ろにのけ反らせるも…
擦り切れた指が僕を諦めさせた。
仕方なく目ん玉の様子だけ見ていこうと隙間から覗いてみると、いつもよりくっきりと大きく見開いた目がこちらを向いていた。
暗闇の中、それだけが僕に目ん玉の位置を知らせる。
「ちょっと重くてムリだ。今度お父さんに頼んで開けてもらうから待ってろよ。」
そう隙間から目ん玉に伝えて、また穴の中を覗くと
…おかえりなさい…
僕は瞬時に顔を上げた。
…ソレが声を発したから。