紫黒の瞬き
こっちを見つめる女の茶色い目には、鬼気迫るものがありゾッとした。
そろそろ夜が明ける。東の空が白み渡り、女の姿がはっきりと見て取れた。

妖しい光を帯びた瞳は真っ直ぐに俺を射る。

先程まで逃げようとしていたのとは違い、反対にこっちに飛び掛ってきそうな、そんな意気込みのようなものさえ感じた。

二人の距離は手を伸ばせばどうにかお互いに届く程で、それが縮まることも離れることもなく。ピンと張り詰めたまま時は流れる。
その沈黙を打ち破る様に一歩を踏み出し俺の手が伸ばさせた瞬間、女の表情が変わった。

一層険しい表情をした女は俺の手を払い除け、瞬く間に距離を詰めてきた。
気付いた時にはその小さな身体は俺の直ぐ前にあり、躊躇う事なく鳩尾に拳を入れられる。

「くっ…」

思わず漏れる声。
前屈みになった体制をすぐに立て直すと、間髪入れずにまた次の一撃が放たれる。

男程の力は無いがそれはかなり力強く、そして的確に相手に打撃を与えられる場所に打ち込まれていた。
それを腕や脚で代わりに受け止めながら身体を動かして躱す。





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表紙・目次

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