紫黒の瞬き
「ああ、大した事ない。気にするな。」

男はチラリと痣に目をやる。
その顔を見て、この男にとっては本当にたいした事ではないのかもしれないと思った。

息も乱さず、ただ私の拳を受け止めていた。

戦う事に慣れている。
そう思ったが、心配するな。と言った男の声があまりにも優しかったから、私を追っている奴らではないのだろう。そう思い込む事にした。

丁度手当てが終わった時、この家の外に人の気配を感じた。
この家の主が目の前にいるのだから、ここに訪れるのは客人なのだろう。
それにしても陽が昇りそれ程時間の経っていない、早朝に客人というのも…。

最悪の場合を想定して、私は腰掛けたまま身構えた。

バンッ!と音を立て勢いよく開いたドア。
ノックをする事なくそれを開け放った人物を私の眼が捕らえた。

「あっ!!」

その人物は私を指差しそして歩み寄る。

「起きてる。」

直ぐ目の前まで来ると、無神経にも私の体中をペタペタと触り始めた。





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