紫黒の瞬き
「オルビナか。良い名前だね。」

赤紫の皮を剥ぐと濃い黄色の果肉が姿を現す。
果肉は驚くほど水水しく、皮を剥ぐだけでもその果汁が手から腕へと伝わる。

その果実を次から次へと豪快に頬張るアサガ。
その途中にごく自然に織り交ぜられる会話。それはジンとアサガが日常しているものなのだろうか。当たり前の様にアサガは喋り、ジンが言葉数少なくそれに応える。
それから、私に対しての疑問を少しぶつける。

年齢。出身地。家族構成……

私が応えられそうな質問ばかりをされるが、それはきっと二人の気遣いなのだろう。
何故。
如何して。
そんな事を訊ねられてもそう簡単に答えることは出来ない。
その事を分かっての質問なんだろう。

彼らが私の事を少し知ったのと同じ様に、私は彼等の事を知る。
23歳の彼等。二人は仕事仲間で、さっき外で見たもう一つの家でアサガは生活をしているらしい。
互いに一人暮らしで家族は幼い頃に亡くしたようだ。

アサガもジンと同じ黒髪。目の色はジンの黒い瞳よりも少し明るいこげ茶色だった。
そして同じぐらいの長身で、二人は体格も似ている。
最初に感じたように、やっぱり農民でも商人でもなさそうだ。
だとすれば、いったいどういった仕事をしているのであろう。
そう思った私はその疑問を素直に口にした。

「仕事は何してるの?」

まだ少し掠れる声で訊いた。





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