紫黒の瞬き
目の前に広がる光景に、私は何度も目を瞬かせる。
沢山の人々、道の両脇を埋め尽くす露店。露店の並んでいる後ろには店や宿も点在していた。

活気あるその光景に心が弾む。

「町に来るのは初めて?」

「こんなに大きな町は初めて。」

前に住んでいた所の近くにも町はあったが、こんなに大きなものではなかった。
それに、人目を避けるように暮らしていた母と私は、町に出向く事も少なかった。

「オルビナ。」
はしゃぐ私にジンが声を掛ける。

「何?」

「離れるんじゃないぞ。」

「うん。」

もちろんジンとアサガから離れて行動するつもりはない。
逸れる(はぐれる)事は目に見えて分かっているし、そんな勇気もない。
何処で、誰に、出会うかわからない。

ひょっとすると、私を追っている奴らに見つかる。その可能性も無きにしも非ず…。





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