紫黒の瞬き
紫の石は掌の中。
細い鎖の部分は鈍い光を放ちながら、チャリンと小さな金属音を立て膝の上に落ちた。

力が抜けてきた体を岩に預けそっと瞼を下ろす。

今日が新月で良かったと思う。
月のない闇夜。その闇と同化するように。
私は無になる…

躊躇うことなく、私は意識を手放した。











「おい。」

俺は隣を歩くアサガに声をかけた。
微かに漂ってくるこの臭い。

「臭うな。何処かに怪我をした獣でもいるのか?」

アサガも同じように気付いた。

「そんな気配はないが。」

辺りを見回すが、この暗闇では遠くまで見て取れることは出来ない。
見る事が出来るのはせいぜい林の手前までだった。

尤も風に運ばれてくるその臭いは林の方からではなく、自分たちが進んで行こうとするその先、川の流れと共にやってくるように感じた。






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