紫黒の瞬き
焼け付くような喉の痛みを覚え、私は目を覚ました。

朦朧とした意識の中でここがどこなのかを考える。
見覚えのない天井。部屋の匂いさえ私の知らない物だった。

ジンジンと疼く左手首。

はっとして勢いよく身体を起こした。

「……っつ…」

全身いたる所にピリピリとした痛みが走るが、一番痛かったのは頭だった。
割れるよに痛む頭を抱え込む。身体も力が入らず、またベッドへと身体を倒すはめになった。

ここが何処かはわからないが、見覚えがある部屋なわけなかった。
17年間過ごし慣れ親しんだ家。あの家を飛び出したのは何日前の事だったのだろうか。

遠い昔のようでそうではない。

「気付いたか。」

突然ドアが開き、かけられた声にびくりとする。

どうしてあのまま死ねなかったのか。
捉えられ陵辱されるぐらいなら、私は死を選ぶ。

漆黒の髪に同じ色の瞳。
長身なその男はすらりとしているが、私が見てわかるぐらいにしっかりとした筋肉を身に纏っていた。
鍛え上げられているようなその体格を見て、私は血の気が引く。

農民でも商人でもなさそうなこの男。

それは追手ではなく、何と思えば良いのだろうか。





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