加納欄のお化け屋敷 シリーズ11
あたしは、そう言って着替えの洋服がないか、覆面車まで歩いて行った。

後部座席にシャツが、置いてあった。


借りちゃお。


緊急事態ってことで。


あたしは、苫利先輩の、クリーニングから戻ってきたばかりのシャツをあけた。

「後で、謝ります」

あたしは、謝りながら、シャツを着替えた。

「着替えたのか?」

いつの間にか、大山先輩が来ていた。

「アイツどうしたんですか?」

「あぁ、鮎川さんに任せたよ。お前を襲った理由もすぐわかるだろ?」

「なんでもいいですよ」

「お前なぁ。・・・ソレ誰の服だよ」

「????」

「その、シャツだよ。紳士物だろ」

「え?あぁ、はい。鏡の破片が痛かったから、借りちゃいました。苫利先輩のだと思うんですけど。後で、謝ります」

あたしは、シャツをつまんで説明した。

「やめろよ」

「え?」

「・・・脱げよ」

「えっ?」

「あ、いや」

大山先輩は、慌てて顔を横に向けた。

「先輩がそういうなら」

あたしは、ボタンを外す真似をした。

「な、何してんだよ」

「脱ぐんです。着替えないですけど」

「・・・わかった。そのままでいい」


自分から、言ったくせに。


「お、タカと祥子だ」

大山先輩は、話題をそらした。

「そういえば、祥子先輩、さっき不機嫌そうにみえたけど……」

お化け屋敷で、あたしの前を通り過ぎた時の、祥子先輩の表情を思い出した。

「焼きもちじゃねぇの?」

大山先輩が、シレッと言った。

「焼きもち?どうして?」

「そりゃお前、わかるだろ?」


え~、わかんないよぉ。


あたしは、困った顔をした。

「理由があるにせよ、彼氏が女と抱きついてたら、ヤなんじゃないか?」


そりゃそうだ。


え?


彼氏?


あの・・・。


初耳なんですけど。


「お、大山、先輩・・・?し、祥子先輩の、お相手って・・・?」

あたしは、顔をひきつらせながら、大山先輩を見た。

「知らなかったのか?」


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