【短】ふたりぼっちの乾杯
ぱらぱらと頭の上に降って来た茶色い玉を夢中で口の中に入れた。
でもね、夢中なのはごはんじゃないの。
そんなふりをして、本当はあなたを見てる。
だってわたしがごはんを食べているときのあなたの顔ったら。
もう目も口もゆるゆる。
帰ってきたときの疲れた顔はどこか遠くへふっとんじゃってる。
ありきたりな言葉で言えば、幸せそう。
じゃあもっとすごい言葉で言えば?
残念ながらわたしの小さな脳みそはそこまでの言葉は知らないみたい。
「本当、なっちゃんはうまそうに食うよなぁ」
つん、と水槽をつついてあなたは笑った。
そう言うあなたは、あまりおいしそうにごはんを食べないのよね。
人間の食べるものは、わたしが想像するよりおいしくないものなのだろうか。
茶色一色の味気ない餌と違って、鮮やかでおいしそうに見えるのに。