OTOGI Rock'n'rool
「…………え?」
"兄ちゃんの命日"って…?
私が訳もわからずに固まっていると、真崎くんは笑顔のまま続ける。
「ほんとはおれが継ぐはずじゃなかったんだ
おれには3つ上の兄ちゃんがいて、けど、突然いなくなっちゃった」
真崎くんの一人称が"おれ"に変わった。
なんだか、いつもの真崎くんじゃないみたい。
「ほんとに突然で、だから、兄ちゃんすごい気にしてると思うんだ、おれのこと。急にこんなことなってごめんなって。
けど兄ちゃんだっていっぱい苦労してたんだよ、長男だからって親の期待全部背負わされて…
だからコイツで伝えたかったんだ、おれは大丈夫って」
真崎くんはまた背中のギターを見つめる
「6月9日ってさあ、ROCKの日じゃん?
それにおれ音痴だけどさ、歌なら、アソコまで届くかなぁって」
真崎くんが指差した先は、雲一つない青空。
「うん、届くよきっと」
私も一緒に、空を見上げた。