OTOGI Rock'n'rool
もう一度名前を呼ぶと、塁くんはハッと我に返って手を横に振った。
「あ、や、なんでもない」
どうしたんだろ?急に
私もしかして変なこと言った!?
「塁ーっ、先行くぞー」
私が考えていると、遠くで待っていた塁くんの友達が叫ぶ。
「あ、やべっ置いてかれる!」
塁くんは慌てて鞄を肩にかけた。
「じゃーな!頑張れよ」
「うん、ありがとう」
そして私に軽く手を振ると、早足で友達の待っている所まで向かう。
「あ!白木!!」
だけど塁くんはなにか言い忘れたのか、途中で立ち止まってこっちを振り返る。
私が首を傾げていると、塁くんがにっこりと笑った。
「暗いから、走って帰れよ!」
「…あっ、うん!」
塁くんは私の返事を聞いて頷くと、今度こそ行ってしまった。
本当、いい人だなぁ…
私はしみじみとそう感じながら、言われた通り走って家に帰った。