OTOGI Rock'n'rool
クララさんは、私の一つ隣のイスに腰掛ける。
それから私の方を向いて尋ねた。
「ごめん、名前何ちゃんだっけ?
アイツ変な名前で呼ぶから、本当の名前聞き忘れてたよね」
「えっと、白木美優です」
「あぁ、だからシロミちゃんなのか」
マスターが納得したように手をうつ。
「覚えててくれたんですか?」
「もちろん、可愛い子の名前はちゃんとみんな覚えてるよ」
そう言ってマスターがにっこりと笑う。
笑顔で可愛い、なんて言われたから少し顔を赤くしてしまった。
だけどクララさんはギロリとマスターを睨みつけていた。
「あ、さっきこれ美優ちゃんから頂いたんだ。由良からもちゃんとお礼言って。」
だけどマスターはそれに慣れているみたいで気にもとめず、さっき私が渡したリンゴの入ったビニール袋を持ち上げてクララさんに見せた。