まえがみ
「佳乃、移動教室だよ!」
エリに呼ばれて気がつく、ぼーっとしがちな毎日。
隣の席の人とも入学してから一度も会話をしていなければ、班の人とも話をしていない。
話をしていないというよりかは、話ができない。
「そうだね…行こう。」
小学校の時とは比べものにならない量の教科書と筆記用具を抱え、あたしは席を立った。
移動中、廊下を一緒にあるクエリは、社交的だから誰とでも手を振り合って仲良さげにしていた。
「エリは良いなあ…。」
「…え?何が?」
そう聞いてくる彼女は、学校生活の楽しさを知っている表情をしていた。
「誰とでも会話できて、良いなあって。」
「大丈夫だよ~。佳乃も元気に行けば良いんだよッ。」
肩を組まれ、とんとんと叩かれる。
そうだよね…そうだよね…。
元気に行けば良いんだよね…。
でも…。でも…。
どうしても、怖さが襲ってくるんだ。