空と海の絵かき歌
「せ、晴天ママッ! わたし晴天呼んでくるねっ」
ただでさえ晴天が集中しないから、宿題がはかどらなくて時間がかかる。
ちょっと物足りなさそうな晴天ママに軽く頭を下げて、晴天の居る海まで急いだ。
晴天ママ、ごめんね。
晴天の愚痴なら今度、ウチのお母さんが聞くから許してね。
海岸沿いの堤防から見下ろした砂浜のいつもの場所に、見慣れた背中を見つけた。
宿題も授業中もいっつも上の空の癖に、絵を描いてるときの晴天の集中力はすごい。
スケッチブックの上を所狭しと動かされた鉛筆から生まれる絵。
晴天の絵も好きだけど、描いてるときの晴天の顔も好きだ。
それを邪魔しないようにゆっくりと歩み寄っていけば、
「……あれ」
砂浜に胡座をかいて、ぼんやり海を見つめてる晴天が居て、
思わず歩み寄っていた足を止めてしまった。
だって、なんだか晴天らしくないんだもん。
スケッチブックも鉛筆も、全く動いてない。
何より、表情が……違う。
今日は全然楽しく無さそうだ。