空と海の絵かき歌
なんだか見てはいけないモノをみたようで、止めた足がなかなか動かせない。
砂浜で立ち尽くしていたわたしにいつから気付いてたのか、
「こっち来んの?」
不意に振り返った晴天は小さく笑って、おいでおいでと手招きをする。
「……もぉ。宿題あるのわかってて逃げたでしょ」
とっさに作った笑顔は不自然じゃないだろうか。
近付いた晴天の手の中にあるスケッチブックは、入院する前のじぃじの隣で描いてた時のままだった。
晴天の隣に行くより早くスケッチブックは閉ざされ、
「海汐が来るのを待っとったんじゃ」
クスッと小さく笑った晴天に、気持ちは一瞬で持っていかれてしまう。
ズルいよ、その顔。
何にも聞けなくなっちゃうよ。
「だったら部屋で待ってれば良いのにっ」
悔しいからワザとらしく唇を尖らせて、突っ慳貪に晴天から顔を逸らした。
そんなわたしを見て晴天は笑う。