空と海の絵かき歌
「っ……」
「海汐」
走り寄った晴天の腕から夢中でスケッチブックを取り、ギュッと胸に抱き寄せた。
突然、何も言わずに現れたわたしに晴天は目を円くしている。
「なんで?」
「えっ?」
「スケッチブック! なんで……」
スケッチブックを抱き締め、必死に訴えていた声が震えてる。
目の奥が熱くなって、唇まで小刻みに震え始めた。
晴天の宝物。
それが一瞬で消えてしまうかと思ったら、怖くて仕方無い……。
「何ちゅう顔しとるん……手が滑っただけじゃ」
困ったように笑った晴天が頭を遠慮がちに撫でて来る。
晴天が言うんだからそうだって信じたいのに、胸の中のモヤモヤは大きくなっていく一方だ。
「もう……返してあげないっ」
例え本当に手が滑ったとしても、そんな風に軽く扱っちゃうことが悲しい……。
「……ええよ」
こんな風に簡単に頷いちゃうのは、もっともっと悲しかった。
晴天。
苦しいなら分けて欲しいよ。
頼りなくても、一緒に悩むくらいなら出来るから……。