空と海の絵かき歌
「晴天のバカッ」
泣き虫だったわたしはそんなじぃじの気遣いも、
晴天の真剣な気持ちもわからず、拗ねて泣きながら家に駆け戻る。
「終わったら遊んだるからなっ」
ドアが閉まる間際、いつもの慌てた晴天の声が聞こえた。
だから数時間後。
わたしはちょっとだけ機嫌を直して、麦わら帽子を被った。
「居たっ」
小さく呟いた声が弾む。
堤防から見下ろした浜辺には、並んで座る二つの背中。
そこへ駆け寄るより早く、わたしに気付いたじぃじがニカッと笑って手招きしてくれてる。
じぃじの様子で気付いた晴天は振り向き、目が合うなり駆け出して、
「ほらっ!」
昨日二人で見つけた珍しい形の貝殻の絵を、わたしに差し出した。
「わぁーっ!」
残っていた拗ねた気持ちなんか吹っ飛んんでしまう。
ピカピカの笑顔で晴天の絵を手に取った。
晴天が遊んでくれないのは寂しかったけど、
晴天の絵を見たら笑顔が止まらない。
「晴天っ!」
「痛ぇっ、重いっ」
飛び付いた晴天の背中越しに、じぃじの豪快な笑い声が響いた。