空と海の絵かき歌
晴天がわたしにくれた絵は、今でも大切にファイルの中にしまっている。
「懐かしい……」
ページを捲る度に晴天の絵はどんどんと上達していくけど、
豪快な線と繊細な色合いは変わらない。
明るく華やかな絵だって、本当は暗い気持ちで描いたのかもしれない。
トゲトゲした気持ちの日だってあったに違いない。
でもその一枚一枚には、晴天の時間が流れている。
手提げからはみ出した晴天のスケッチブックが目に入る。
晴天が描きたくないなら、描かなくったって良い。
でも、今まで描いた晴天の絵まで消さないで欲しい。
思い出まで消さないで欲しいよ……。
だってそれは全部、晴天の大切な証だから。
次の日。
宝物のファイルを石川家のポストに突っ込んだ。
『わたしが晴天の宝物を預かる代わりに、晴天にわたしの宝物を預けます。』
貼り付けたメモに、晴天は何を感じるんだろう。
どうか宝物たちが一日も早く、持ち主たちの元に戻りますように……。