空と海の絵かき歌
春風が日に日に初夏の日差しへと移り変わり始めた今日この頃。
集中力も途切れ始め、中だるみしやすい三限目の授業は……わたしの苦手な美術だった。
ただでさえだれてるときに最悪だ……。
先生が教卓に無造作に置いた野菜を、鉛筆でデッサンするのが今日の課題。
ただ机に向かっているよりはマシだと張り切るクラスメートとは打って変わって、わたしのやる気は萎んでいく。
それでも描かないワケにはいかないから、全力は尽くしてみる。
……多分、無駄だけどね。
授業も終盤に差し掛かるにつれ、美術室のあちこちから喋り声が聞こえ始める。
お互いの作品を見せ合いながら褒め合う女子に、
ドングリの背比べで笑い合う男子たち。
その中で、
「うおーっ。やっぱりうめぇな」
「さすが晴天(せいた)。石川 晴豪(せいごう)の孫」
一際注目を集めてる人物。
石川 晴天。
画家、石川 晴豪の愛孫。
そして、わたしの幼なじみだ。