空と海の絵かき歌
晴天じぃじ
「晴天じぃじ……」
「おー。海汐、久しぶりやの」
無機質に白い病室の端っこから、大好きな晴天じぃじの笑顔がわたしを迎えてくれた。
手招きするじぃじの腕は昔、小さかった晴天とわたしを抱き上げてくれたモノより細くなっている。
鼻にもチューブが通されていて、その先にはドラマで見たような機械が置かれていた。
「元気そうやの。……胸は相変わらずじゃけど」
「もぉっ。晴天と同じこと言わないでよっ」
豪快に笑う声が病室に響いた。
パッと見はいつものじぃじと変わらない。
でも、さっき手招きした反対の腕には点滴の管が繋がっていた。
幾つものシワの中に浮かぶ青紫色をした点滴の跡。
晴天はこれを見たくないのかもしれない……。
「はいっ。晴天ママから煮物預かったよ、あと……うちのお母さんからは漬け物」
「こりゃ、ありがたいわ。病院の飯は味が薄いから物足りんくてな」
そう言いながらじぃじは漬け物の入れ物からひとつまみ、よく漬かった大根を口に運んだ。