空と海の絵かき歌


色塗りには参加していたらしく、制服の裾を捲った足は裸足で、指には黒のペンキが付いていた。



「……失礼ね、色塗りくらい出来るよ」



「ええから。ここにおっとけ」



唇を尖らしたわたしに、また晴天は悪戯っぽく笑った。



いくら絵が下手でも、色塗りくらい出来るんだからっ。




わたしの訴えなんてどこ吹く風。
柔らかい晴天のねこっ毛が潮風を受けて揺れてる。



「手、出してみ」



「……なに?」



くりっとこちらに顔を向け、晴天が自分の左手を差し出した。



「空のスケッチブックはいくら描いてもタダじゃ」



「空?」



晴天の左手に重ねたわたしの右手をギュッと握り、晴天がそれを空へと掲げる。



わたしの手を握った晴天の左手は、そのままクルクルと上下左右に動かされていく。



「……なに描いてるの?」


「この雲、あっちのと繋いだらキリンみたいじゃろっ?」




わたしたちの腕のずっと先には細長い雲があって、その右隣にはぼってりと楕円形の雲があった。



「顔と水玉を描いとるんじゃ。ほれほれっ」



「あははっ! 可愛いくなった」
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