空と海の絵かき歌
雲はさっきから変わらない形でそこにあるのに、
晴天と繋がれた手の先には不思議と、ふわふわで水玉模様を付けたキリンが見える。
「たこ焼き、ケーキ……おにぎりっ」
「食べ物ばっかりじゃない」
視界に広がる雲に片っ端から落書きをしていく晴天に、わたしの笑顔も止まらなかった。
空に散々落書きをした晴天は、それだけじゃ飽きたらず、
「次はここっ。ほれっ」
「わっ、ちょっと、引っ張らないでよ」
勢い良く立ち上がったかと思えば、繋いだままのわたしの手を引っ張り寄せた。
わたしたちが立ち上がった砂浜には、うっすらと二人の跡が浮かんでいる。
「今度は何描くの?」
そこへしゃがんで腕を伸ばした晴天の手に繋がれたわたしの指先に、サラサラとした砂の感触。
さっきから黙ったままの晴天の表情は真剣で、
握られた手に力がギュッと、更に込めらた気がした。
「晴天?」
わたしの呼びかけにも反応しない。
ただ砂浜をいじくる晴天の手は止まらず、まるでムキになってるみたいだ。