空と海の絵かき歌
そうして描かれていたのは、砂浜に並んだ晴天とわたしの跡が手を繋いだ姿。
「ねぇ、晴天ってばっ」
「……独りじゃダメなんじゃ」
「えっ?」
ポツリと呟かれた晴天の声はいつになくこもっていて、
搾り出すように零れだした言葉に思わず隣を見たら、
「……見たらダメ。情けない顔しとるからっ」
「晴天……」
すっぽりと晴天の腕に隠されてしまった。
「俺の絵はな、誰かの為にしか描けん」
晴天の心臓が一定のリズムで鼓動を刻み、ここに居ることを教えてくれるのに……、
か細い声が晴天を遠くに感じさせる。
「まぁ……誰かって海汐とじじぃなんやけど」
「えっ?」
そう言って顔を上げた晴天はコツンと、おでこを重ねてくる。
閉ざした瞳。
長い睫をじっと見つめる。
「じじぃの腕、点滴のアザが一杯になっとった」
一度だけ、晴天はじぃじの病院に行っていたらしい。
ちょうど薬で眠っていたじぃじの点滴で繋がれた姿、鼻のチューブ。
どれも晴天には物凄いショックだったんだと思う……。
大好きな絵が描けなくなるくらい。