空と海の絵かき歌

チラっと盗み見た晴天のデッサンは、今にもそこから飛び出してきそうな程リアルだ。



「デッサンだけなら簡単じゃ。……一から自分で描くんじゃないしな」



晴天の簡単はイヤミでもなんでもない。


晴天の絵は、いつでも真っ白なゼロから始まる。
一から全部自分で構築し、積み上げていくのだ。



「さっすが、賞を取ったヤツは言うことが違うね~」



「まあなぁ。なんて言っても石川 晴豪の孫じゃから。俺」



こう言ってワザとらしくイヤミに笑顔を浮かべた晴天に、取り巻きのクラスメートたちが軽く笑った。



「自分で言うなっ」




クラスメートとじゃれ合い、晴天は大きな口をいっぱい広げて笑ってる。




そんな雰囲気から逃げ出すように、わたしは小学生以下に等しいデッサンを隠しながら美術室を後にした。

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