空と海の絵かき歌
結局、三限目の美術のデッサンが仕上がらなかったのはわたしだけだったらしい。
先生に頼んで開けて貰った美術室で、一人居残りデッサンに取り組むことにした。
いくら時間をかけたところで出来映えに変わりはないけどね。
野菜たちとにらめっこすること数十分。
小学生以下から、小学校高学年くらいには上達したかな。
机の上にスケッチブックと鉛筆を置き、両腕をぐっと頭の上に伸ばした。
不意に見上げた美術室の壁に掛かった一枚の絵。
朝焼けに煌めくこの町の海の絵だ。
薄暗い夜の空と、ゆっくり昇りはじめた太陽が入り混じり、
豪快な技法なのに繊細な色に、わたしは何度も心惹かれてしまう。
その隣に仰々しく飾られた賞状に、絵の持ち主の名前が丁寧な字で書かれている。
石川 晴天。
高校生になったばかりの晴天が描いた作品。
わたしが三年ぶりに見た晴天の絵だ。
父親の転勤で町を離れた三年間の絵は、一枚たりとも見せてくれなかったからなぁ。
机に頬杖をつき、晴天の絵をじっと見つめていると、