空と海の絵かき歌
浜辺の後ろ姿
通学用の手提げを家に置いて、わたしはある場所を訪ねる。
「晴天ママー」
「おかえり~海汐ちゃん」
我が家から徒歩十秒の所にある石川家。
わたしの声を聞いたエプロン姿の晴天ママが、パタパタとスリッパを慣らしながら駆け寄ってきた。
「晴天は?」
今日は数学の宿題が出てたから、わざわざ様子を見に来たワケだけど……玄関に見覚えのある靴は無い。
「帰って来るなりスケッチブック持って出掛けてったよ」
わたしが晴天を訪ねる理由は決まっている。
宿題や課題が出ているときがほとんどだ。
だから晴天ママもそれを察して、大きなため息を零してる。
「ちょっと目を離した隙にまったく……」
いつもごめんね~って、申し訳無さそうに謝った晴天ママに笑って首を横に振った。
晴天が宿題をしないのも、フラッと海に行くのも今に始まったことじゃないもん。
さすがにわたしだって慣れっこになっちゃうよ。