サクラ
縮まない距離
"青色"は、動く事なくそこに居た。
ある程度近づいた所で、やはり自転車だったのだと気づく。
何のへんてつもない、普通の自転車に見えるが。何か仕掛けでもあるのだろうか。
私は夢中でその自転車に向かって走る。
……が。
乗っている人の顔がぼんやりと見える距離まで近づいた時、青の自転車は走り出した。
あの速さで走られたら、100%追い付けなくなる。そう思って焦るが、走り出した青い自転車は少し早い程度だった。
私の周りの景色はみるみるうちにぼやけて、青だけが私を占領していく。
"青"
私は貴方をずっと待っていた。
会いたかった。
会いたくなかった。
距離は縮まらないまま、埋まらないまま。
けれど、伸びていく事もない。
私は貴方を知っている。
その理由が、知りたくて、知りたくなかった。