サクラ
次の信号で、私はやっと"青"に追いついた。
乗っていたのは、年齢が同じくらいの男の人だった。
目線は、彼が前だけを真っ直ぐ向いていたので交わる事がない。
失礼なのは重々承知で、じろじろと彼を見る。
黒い何かのロゴが入ったTシャツに、紺のジーンズという変哲のない格好だ。
特に顔が優れているとか、足が長いとか、優れた身体的特徴も無い。
観察をしていると、彼がふいに視線を外す。
──目が、合った。
彼は嫌な顔をする所か、ニッコリと笑った。
私は、その事が酷く悲しくて胸がギュウウ、と痛んだ。