桜の木の下で…
…殺されてる。
瞬時に悟るが、身体は金縛りにあったように動かない。
見つかれば命はないぞと自分であって自分ではない誰かが頭の中で叫んでいる。
しかしやはり女がいる場所を凝視したまま動けない。
「っ……」
と、ぼそぼそと女が喋る気配。
見つかった!?
どくんっ と、とっくに壊れそうなほどに打ち鳴らされていた心臓が一際大きく跳ねた。
女に聞こえるのではないか。
そんな不安が過ぎる。
先程、噴出した汗が尋常ではない早さで流れ落ち、パーカーの下に着ていた薄手のシャツがそれを次々に吸い取っていく。
身を小さくして、様子を窺うが女はただ独り言を言っているだけのようだった。
耳を澄ませば聞き取ることが出来そうだ。
「……たは…で……なる………ありがたく思いなさい」
最後の言葉だけがはっきりと聞こえた。
それはすでに息をしていない女性に投げかけられた言葉らしい。
女は背中をむけていて表情を見ることは出来ない。
女の足が横たわっている女性の身体の上に乗せられたかと思うと、その身体を押し出すように前へと伸ばされた。
女性の身体がごろりと回転したかと思うと、その姿が一瞬にして消え去った。
えっ…?