桜の木の下で…
「……さようなら。不運でおばかなお嬢様」
くすくすと笑う女の声。
そして手にしていたシャベルを動かし始める。
シャベルの動く先を見れば、そこには盛り上がった土の塊。
どうやら土を掘り起こして穴を作りそこに女性を蹴り落とした。
ということらしい。
シャベルを動かし穴を埋め続けること十数分。
作業終了と共にシャベルを放り出し桜の木に抱きつく女。
「久し振りの養分はどう?1年に1回は多いのかしら。あまり多すぎてもよくないものね」
囁くような声だったが、神経を集中している今、女の子供に話しかけるような優しさを含んだ声は怖いほどに耳を奮わせた。
「……ねぇ、圭?どうしてあなたがここにいるのかわかってるわよね?
圭が悪いのよ。
この桜の木を一緒にここに植えた時、ずっとずっと一緒だよって言ったのに…
たった2年で心変わり。
『あいつは俺が一緒にいてやらなきゃだめなんだ』ですって?私は?
私だって圭がいなきゃだめだった。
それなのにあいつは俺がいなきゃだめなんだ??それって完全な裏切り行為よね。
私が許すと思った?冗談でしょ?私だってどうしても圭が必要だったのよ…
だから私はあなたを取り戻したの。これからもずっとずっと圭は私のもの。
…あぁ、心配しないで、あの子は今でも圭がいない現実に打ちひしがれて立ち直れていないのよ。
だからちゃんと生きてるわ。でも忘れないでね。
あの子がもし幸せになろうとしたら、私は容赦なくあの子に制裁を下すわ。
私の幸せを奪っておいて自分の幸せもなにもないわよね?圭もそう思うでしょ?」
独白のように続く長い長い独り言。