桜の木の下で…
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お帰りなさいませ。ご無事でなにより。
…まさかっ。めっそうもない。私は最初に申し上げたはずです。
絶えられますか、と……
それにしてもよほどの恐怖を体験なされたようですね。
顔色が優れないようだ。
顔面蒼白。その言葉が今のあなたにはぴったりですよ。
…あぁ、そろそろお帰りになりたい。
そうですね。それがいい。ゆっくりと休息を取られることをお勧めいたします。
ですが、ひとつだけよろしいでしょうか。
今日、あなたが見たこと、聞いたことは他言無用。
全て忘れてしまいなさい。
それが出来なければ、あなたは再び恐怖を垣間見ることとなるでしょう。
よろしいですね?
くれぐれも、くれぐれもお忘れなきよう。
あぁ、そうでした。あなたは私が誰なのか、お聞きになりたいと仰っていましたね。
けれど、残念ながら私に名はございません。もちろん実体も。
強いて言うならば人間は私のことを『好奇心』と呼ぶ。
そう…誰の心にも私は存在しております。
私が言うのもなんですが、好奇心とは厄介なものですね。
先にある事が、恐怖だとわかっていたとしてもそれに打ち勝つことは難しい。
お気をつけ下さい。
好奇心に負け、ご自身の命を粗末になさらぬよう。
私は心より願っております。
それではまた、お会いすることもございましょう。
これにて本日は失礼させていただきます。
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