遥か遠く
「萌香さ、太一さんとは上手くいっているの?」
話題を切り替えるようにして言った。
「え…?んー、別に。普通だよん」
萌香の表情が一瞬曇ったように見えた。
気のせいだっただろうか。
「良かった。萌香のことだから、また別れたのかと思ったよ」
そう言って、私は頷いた。
だが彼女は表情を険しくした。
「そんな簡単に言わないで…あんたにはこの辛さわかんないよ」
彼女は不貞腐れたように言った。
しばらくは重い時間が流れていた。
萌香は缶コーヒーを一気に飲み干し、ゴミ箱のそばに行き、缶を捨てた。
彼女は戻ってくると、私の頭を軽くコツンと叩いた。
「人のおせっかいばっかしてないで、あかりも早くほんとの恋しな!じゃあね」
萌香はバッグを抱え、逃げるようにして一瞬のうちに去って行った。
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