遥か遠く
「まぁねぇ…人生そんなもんさぁ!ってゆうとおかしいんだけど、あたしも最初のころはそうだったから。大丈夫だって」
私は彼女に対しての親近感を感じた。
私は…あのあとコンビニに勤めることになったが、
“阪野”という男に雑用をされたりさせられ嫌な日々が続いていた。
彼が店長なわけでもないのに……。
でもなんであのとき私の相手をしたの?
喫茶店のトイレの鏡を見て、彼のあのうつろな目を思い出す。
水道の蛇口をめいっぱい捻り、ジャー、という虚しい音を聞いていた。
トイレに人が入ってきたので、急いで蛇口を締めた。
「行こか」美咲のもとへ戻ると、彼女は席を立った。
美咲に阪野の話を細々することもなく、ふたりは喫茶店を後にした。
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