遥か遠く
*
「遠藤」
私は彼に背を向けたまま答えた。
「はい」
「おまえ、あれやれ」
私は品物の整理していた手を止め、嫌な予感がしながらも後ろに振り返る。
阪野の指差している方向を辿ると、レジを指している。
「早くしろよ」
「え…。やっていいんですか!?」
彼は私に背を向けて、力なく頷いた。
私はレジを任されたことが何よりも嬉しくて、小さくガッツポーズをした。
*
それからはよくわからないが阪野の態度が変わったような気がする。
よく笑顔を見せるようになり、雑用もやらされなくなった。
そしてくだらないことで笑い合えるようになった。
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