遥か遠く
「阪野さん」
「んー。」
「あのっ…携帯落としてますよ」
「お、さんきゅ」
「それじゃ失礼します!」
私はこんな些細なことでも嬉しく感じていた。
最初は意地悪で偉そうなイメージも嘘のように取り引かれ、私は知らないうちに彼に思いをよせていた。
伝える勇気なんて出るわけもなく、私は遠くで彼を見つめているだけ…。
「えんどー」
「うん?」
声を掛けてきたのはバイト仲間の竜也だ。
彼だけは唯一敬語を使わずに、気楽に話せる男友達だった。
「はい、これ」
彼は一本のジュースを差し出した。
「…ありがと」
「あのさ」
「え?」
「…なんでもねー」
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