遥か遠く
*
「おい?」
阪野が私の顔を覗き込んだ。
彼の顔はすぐ近くにある。
ウザいくらいに私の心臓は波を打った。
まるで、温泉からあがってきたときみたいに、顔が熱くなっている。
私は彼から一歩離れ、距離をつくった。
「おいって…なんですか!!?」
「熱…あんの?」
私は首を横に振り、おどけた顔を見せた。
「のんきな奴」
彼はそう言うと、奥のほうに去って行った。
「遠藤さん」
店のトイレから出てきたとき、誰かに呼ばれた。
「あ、紺野先輩」
「ねえ、最近遠藤さんと阪野って仲良いよね!」
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