眼鏡君は今日も不機嫌
1.前の席の彼
――――――ブァッ!!
「わあ、ごめんっ!」
「……………」
春風の勢いでヒラリと舞った数枚のプリント。
また、機嫌を悪くする彼。
原因はいつも―――あたし。
「ごっ…ごめんね……」
しゃがんでプリントを拾っているあたしの前にいつも通りしゃがみ、いつも通り無言でプリントを拾う……前の席の彼。
プリントを拾う振りをして彼を盗み見る。
相変わらず目が見えないくらいに伸びた前髪。
萌えポイントのはずの黒縁眼鏡はちっとも萌えない。
けど……いつ見ても綺麗な黒髪と肌は、女のあたしでもうっとりしちゃう。
そんな彼、同じクラスになって1ヶ月…前の席になって2週間、まだ一度も話したことがありません。