BE FREE,GO SOUTH
最期のとき
新宿3丁目の交差点でタクシーを降りると、僕はきびすを返して新宿2丁目に向かった。

緊張に高鳴る鼓動(こどう)を抑えて、ネットで入念に調べた売専の店に入り、

「この子、お願いします」と僕は写真の中から気に入った子を指名した。

ほどなくその子が出てきて、近くのラブホテルに僕等は歩いていった。

彼は笑みを絶やさず、僕の身体をマッサージしながら、慣れた要領で行為に及ぶと、

懐かしいサークルの仲間の顔や家族の顔がふとよぎって、涙が滲(にじ)んだ。

「こういうの、初めてなんだ」

彼はそんな僕をそっと抱きしめて、仔犬の様に優しく舐めてくれた。

約束の時間はあっという間にたち、彼はてきぱきと着替えて、ホテルからそっと帰っていった。
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