BE FREE,GO SOUTH
詩音、僕の前では溌剌としていたけど、こんなしがらみだらけの所で

疲れたことはなかったのかい。

何でそんなに独りで頑張れたんだい。

僕はもう限界だ。

いや、あの頃の僕の前の詩音は、本当は幻で、

優しくて我慢強く君は、いつも疲れて頼りない僕の愚痴ばかり聞いてくれて、

君を押し潰していた本当の悩みを、僕にさらけ出すことができなかったのかい。

僕は大切な君に、どこまでも飾ることなく誠実でいたかった。

僕は君の話や息遣いにちゃんと注意深く耳を傾けていただろうか。

自分の弱さを語りすぎていただろうか。

そしてそのまま、何も語ることなく独りで先に行ってしまったのだろうか。

何て儚(はかな)く、淋しい友情だったんだ。

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