紅き天
「また来てくれたのかぃ。」



皺くちゃの顔をさらに皺くちゃにし、お爺さんは2人を見上げた。



すっかり背が縮んだお爺さんは、静乃よりも背が小さくなってしまった。



よく、疾風に「静乃に抜かされたら終わりだな。」と言われていた。



「久し振り、爺さん。」



疾風は2つ飴を取りながら、お爺さんに笑いかけた。



「だなぁ。
ちょっと間が空いたなぁ。」



お金を受け取りながら、お爺さんは手を伸ばして疾風の肩を叩いた。



その手は職人らしく、力強かった。



「いただきます。」



静乃は喜んで飴を舐め始めた。



「静乃はいつまで旨いと言ってくれるかの。」



朗らかに笑いつつ、お爺さんは寂しそうに言った。



「いつまででも。
私、他の飴屋さんのは食べられないの。」





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