紅き天
私の考えを読み取ったように、絶妙のタイミングで疾風は言った。



「そんなにここから出たいのか?」


「そんな…。」



曖昧に流した私をギッと睨み、疾風はもう一度言った。



「出たいのか?」


「…………………少し。」



逃げ場がない。



ジリジリと疾風から一番遠い壁ぎわに避難する。



「なんだよそれ。」



呆れた声を出し、疾風はため息をついた。



「意味わかんねぇ。」


「疾風、ゴメン。」


「謝んな。
なんか惨めになる。

お前、俺のこと好きじゃないのかよ。」



私は俯いていた顔を上げて言った。




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