紅き天
「母様!」



静乃が怒鳴っても構わずに、父さんの腕を振り払おうとしている。


もう40半ばなのになんて力だ…。



なんて考えて、ボーッと二人を見ていると、唇に何か柔らかいものが当たった。



「静…!?」



基子さんが驚いているから、たぶん、これ…!



静乃が俺に口付けている!?



唇が離れると、真っ赤な顔をした静乃と目があった。



「こういう事なの。」



消え入りそうな声でそう言い、パタパタと部屋を出て行った。



…俺を置いてくなよ。



残された俺に二人の視線が集中する。



「おう、やっとこうなったか。」



1人動じない父さんの横で基子さんはわなわなと震えている。



「貴、貴様!
静乃を誑かしよって!」


「逆だよ逆。
静乃、10年も前から疾風の心を弄んでたんだぞ。」


「そんなの知ったことか。」



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